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四章 「メッセージともどかしさ」

Auteur: 桃口 優
last update Date de publication: 2025-08-27 14:26:28

スマホが通知音を鳴らした。

 私はすぐさまスマホを見た。

 でも別のアプリの通知で、彼からの返信ではなかった。

 なんだと残念に思った。

 まるで音に反応するかのように、私はその後同じことを何度も繰り返した。

 その間にメッセージが既読になっているかも確認したけど、なかなか既読にはならなかった。

 既読にならないと返事は来ないのはわかっているけど、つい期待してしまう。

 そんな奇跡は起きないけど、ついロマンチックなことを考えてしまう。

 そして、私ってこんなにせっかちだったかなと自分でもこの反応に驚いている。普段の私はどちらかというとせっかちに分類されるけど、ここまでせっかちではないはずだ。

 私がメッセージを送ってから二時間が経ったぐらいの頃、彼から返事が返ってきた。

「安藤さん、メッセージを送ってきてくれてありがとう。

今はまだバタバタしているけど、元気にしてるよ。

安藤さんはどう? 元気にしてる??」

 私は返事が返ってきたことにホッとした。

 そもそも返事が返ってくる保証はなかったから。

 彼はそんな人ではないと思うけど、めんどくさいと思われたら、ただスルーされる。

 スマホを通したコミュニケーションは相手の気持次第ですぐに壊れる。

 しかし、短いメッセージの中に彼の優しさを感じた。

 きっと自分のことでいっぱいいっぱいだろうに、私のことまで心配してくれている。

 何気ない言葉かもしれない。

 でも、彼がここにいるとすごく嬉しくなった。

 私はすぐに返事を返した。

「こっちこそ返事くれてありがとうね。

佐々木くんが、元気にしていてよかった。

心配だったからさ。

私は変わらず元気にしてるよ」

 私はそう返事を返した後、こんな風な言葉でよかったのかなとわからなくなった。

 言葉を文字化すると、急に温度がなくなるように私は感じている。

 冷たい感じなどになっていないだろうかとか読んでどこかの文で嫌な気持ちにならないだろうかと様々なことが心配になってきた。

 しかも、送った後に思ってしまったからどうしようもできない。

 私は、いつも思ったらまっすぐで、大抵の場合考える前に行動してしまう。

 彼からの返事は一時間ぐらいだった。

 たった二通やりとりをしただけで、すぐに反応がないメッセージというものにもどかしさを私は感じてしまった。

 仕方のないことだと頭では理解しているのだけど、心が同じように反応してくれない。

 なんというのだろうか。メッセージをしていると心に温かい気持ちが入ってくるけど、それが毎回満タンにはならない。

 もちろん、相手にも都合があるだろうから、返事がないからといってさらにメッセージを送ったりしなかった。

 ただ、相手に直接話しかけた時はすぐに返事は返ってくる。

 さらに、メッセージなら相手が今どんな顔をしているかわからない。

 彼の顔が見たい、会いたいと強く感じた。

 私の恋という病は、きっともう重症だろう。

 「テレビ電話」という手段もあるけど、今は私に勇気が出なくてそれはできそうにない。

 顔が真っ赤になりそうだから。

 うじうじと悩むことで何かが変わるわけではないのに、彼のことになるといつも悩んでしまう。

 恋となると、どうして私はいつもの私じゃなくなるのだろう。

 なんだか不思議な感覚だった。

 それから彼とメッセージのやりとりをするようになった。

 一日数通と決して多くはないけど、その日に返ってこなかったものは次の日に必ず返ってきた。

 私はそんな関係になれたことがまず嬉しかった。

 勇気を出して私からメッセージを送ってよかったと心から思っている。

 もどかしさや寂しさはやっぱりあるけれど、何もつながっていないよりは断然いいから。

「おはよう。

昨日は返事返せずにごめんね。

クラスのまとめ役の仕事は順調にいっているんだね。

僕は途中でいなくなったから、どうなったか心配してたよ。本当によかった」

 彼とのメッセージのやりとりは何か特別な内容のものではないことが多かった

 ごくありふれた日常の話だ。

 でも、彼の気持ちが知れて、私は満足している。

「おはよう

いいよいいよ。

うん、今は川田 悠人くんと一緒にしているよ。

資料作りも、佐々木くんが頑張って作ってくれていたおかげでかなり楽にできているし。

本当にありがとうね」

「川田くんが僕の代わりをしてくれたんだね。

彼なら、まとめるのもうまいし、いいね。それに彼はクラスのみんなから人気があるからね」

 珍しく返信が早くにきた。

 川田くんの性格もよく理解していて、本当に全体をよく見ているなと彼に対してまた尊敬の思いが膨れ上がってきた。

 でも、どうしてだろう。

 彼のメッセージから寂しさが少しだけ感じられた。

 彼はまじめでユーモアもあって、私は彼と一緒にしている時の方が楽しかったのに。

 だけど、私の好きな気持ちを隠して、どうやってそのことを伝えられるだろうか。

 私はなんて送っていいか珍しく悩んでしまった。

 その時あることに気づいた。

 もしかして彼も何らかの大きな理由からどう送っていいか迷ってしまい、返信が遅くなっているのではないだろうか。

 でも、彼は何を悩んでいるのだろう。

 もし悩みを抱えているなら、私は彼の悩みを知りたいと思った。

 一緒に考えられる問題かはわからないけど、力になりたかった。

 まだ彼の口から突然転校した理由を聞いていない。やっぱりそのことが関係しているのだろうか。

 彼は一体何を抱えているのだろう。

 私の口からそれを聞くのはなんだか違う気がするから、彼が言ってもいいと思えるまで待とうと思ったのだった。

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